「……はあ、」

またついたため息。


気がつけば、商店街の出口が目の前だった。
長くていつもは、しんどいしんどい思いながら、自転車を進ませる商店街を、ボーッとしてるうちに通り抜けようとしてるのだ。

こんな時間だから、商店街も賑わうはずもなく。



"楓ちゃん、今日は学校休み?"


お母さんの知り合いの花屋の店員さんが、うざったいくらい明るく話しかけてくるもんで、無視なんてしてしまった。

気づいてないふり。
こんなことをしたのも、はじめてだ。





商店街を抜けて、なんとなく公園へ足を踏み入れた。

いっそう蝉の声が大きくなり、耳を塞ぎたくなるほど、うっとおしかった。


ひとりになりたい。
そんな場所はあるのだろうか。

この世界の、綺麗なものを見てみたかった。
誰一人と純粋ではなくなっていく人間の心に、静かな安らぎがほしくて。


太陽をしのげるベンチに座って、木になる若葉の隙間から覗く光に手を伸ばした。


「なあ、」


突然、だれかの声が聞こえて。
それはまるで、わたしに言っているようで、あたりを見回す。



「きみも、サボり?」


わたしが座るベンチの、ひとつとなりのベンチにいた青年が、からかうように笑った。