遂に来た。




「甲子園だ・・・・」




甲子園球場を前に私と駆流は立ち尽くす。




テレビでしか見たことなかった。




でも、来て見なきゃここの空気感も感じられない。




「今日は軽く練習して明日に備えるからな。怪我だけはするなよ。」




キャプテンと監督がそう言うと近くの球場で練習をする。




うん。みんないつも通り。




明日を迎えるだけ。




その日の夜、私は1人ホテルの部屋のベランダにいた。




別に何をするわけでもなく、ぼーっと空を見ていた。




駆流に伝えたいこととか考えてた。




どうしても言葉にしたくて、今の私の想いを。




だから、スマホを取り出して録音した。




「駆流。私ね、駆流に伝えたいことがあるの。甲子園で勝って、戻ったら言いたいことがあるの。・・・・・駆流のことが好き。でも、今は言わない。野球が私たちの中心で、何よりも大好きなもの。私のこの気持ちが邪魔になるなら伝えない。でも、伝えたい。知っててほしい。だから、今録音してみた。駆流は聞くはずないのに。・・・・私を1人の女の子として見てよ。彼女候補に入れてよ。兄妹なんて言わないで。・・・・・・・約束守ってくれてありがとう。大好き。誰よりも、駆流のことが。」




私は1つ深呼吸して部屋に戻る。




「明日、私に出来ることを精一杯やる。」




そう呟いて私は眠りについた。