…後日、夕陽はこっそり圭吾の勤める病院に向かった。

仕事が終わるのを、職員駐車場で待っていた。

「…夕陽ちゃん?」

出てきたのは、圭吾ではなかった。

「…圭吾はまだ仕事中だよ?」
「…圭吾さんを待ってたんじゃありません。相良先生を待ってました」

…何故、圭吾ではなく、明を待っていたのか?

その理由を聞いた明は、ため息をついた。

「…ダメですか?」
「…ダメじゃないけど」

「…こんなことお願い出来るのは、相良先生だけなんです」
「…俺、夕陽ちゃんの事、好きだって言ったの覚えてる?」

「…勿論です、忘れられません」
「…どうしても、そのお願い聞かないとダメ?」

「…お願いします!!」

夕陽は、明に深々と頭を下げた。

しばらく考え込んでいた明がまた、ため息をついた。

そして、夕陽の顔をあげさせ、頭をよしよしと撫でる。

「…仕方ないな、俺は、お膳立てするだけだよ?」
「…ありがとうございます!」

明の言葉に、夕陽は満面の笑みを見せた。

そこへ、車に大事な物を忘れていた圭吾が病院から出て来て、鉢合わせしてしまった。

明の手は、夕陽の頭の上。

当然、圭吾はいい気分ではない。

夕陽は慌てて明から離れるが、圭吾は何を言うでもなく、二人を素通りしてしまった。

「…圭吾さん!」
「…俺のことは気にしないで」

明らかに怒った顔。

圭吾は、夕陽と明の事を勘違いしてしまったようだ。

「…弁解しようか?」

明の言葉に、首をふる。

「…自分で…相良先生にお願いしたことが出来たら、圭吾さんに、ちゃんと話します」

「…手遅れにならない?」

明の言葉に、夕陽は力なく笑う。

「…手遅れになるかもしれません…でも、私は圭吾さんが大好きです」

「…全く…告白されたヤツに言う言葉かな?」
「…ごめんなさい」

「…そんな、素直な夕陽ちゃんだから、好きになったんだけどね。頑張って」
「…はい!」

泣きそうになるのを必死にこらえながら、夕陽は明に笑って見せた。