「…無理」



あたしは顔を隠すようにサッと下を向いた。


だって、きっと……



「うわっ、顔真っ赤じゃん!!!」



ほら、やっぱり。


あたしは火照る頬の熱を冷ますように、昨日勉強した数式を頭の中でぶつぶつ唱える。


無心、無心……y=a +……


「さーやー」

「…っ」


再び名前を呼ばれた瞬間、あたまのなかで何かがぷつんと切れた。



「もういいから何度も…!!」



名前を呼ぶな。そう言おうとしたけど、言えなかった。だって…



「な、なななにすんの…!?」

「何って、キス。ちゅー。」


あたしの唇から離れたあたたかいもの。

それはやっぱり、秋本の唇。


「それくらい知ってるよバカ…!そうじゃなくて!」

「何?もう一回?もー、沙弥ってばツンデレなんだから~」

「違っ…!!」


再び近づいてきて、そっと触れた唇。


_あたしは、やっぱり秋本にはかなわないのかもしれない。


「……………っ!長い!!」


ドンッと秋本の胸を押し、キスは強制的に終了。


「はは、顔赤い!」

「うっさいばか!!」