怒りが止まらかった。こんな結末すら想像できなかった自分に、こんな結末に従おうとする彼に、お互いの想いが通じあっていれば大丈夫と幼稚な考えを巡らせていた馬鹿な二人に。

「そっか。それなら、もう会わないほうがいいね」
「だな。」

私がフロントガラスを見つめ言うと、彼は嘲笑を浮かべ、ふっと鼻で笑いました。今まで聞いた彼の声の中で一番冷たい声でした。


この時、私はまた独りだと思いました。彼も独りなんだと思いました。
ファミレスの駐車場。降りるかと聞かれ私は首を横にふりました。これが精一杯でした。そんな私を彼は何も言わず抱きしめてくれ、その瞬間涙がこぼれました。親以外の前でこんなに泣いたのは初めてでした。嗚咽に似た愛しさで胸が抉られるようでした。苦しくて悔しくて、彼がどう思っていようともう人の物になってしまった左手を何度も何度も何度もつねった。時折、いてーよと呟く鼻風邪をひいたときのような彼の声が、憎くて愛しくて吐きそうになりました。お互いのためを思っていたことが招いた結果です。惨めで、無様で、すべてが自業自得なんです。


抱きしめられながら、私は思いを巡らせました。恋人ならすべてが許されたのに。不倫でも浮気でもなんでもなかったのに。後ろめたいことは何もなかったのに。なんで付き合わなかったんだろう。後悔ばかりが浮かんできてどうしようもなかった。私たちは綺麗好きすぎました。お互いが苦しんでいるときにお互いを支えて、お互いが友達以上の想いを抱いているのに友達という肩書きを大事にしていて。すべてを綺麗に綺麗に創り上げすぎて、こんなに無様な崩れ方になったのです。誰かにおもいきり笑い飛ばしてほしい。そんな気分です。