「ここの蛍は陸生蛍と言う種類らしい」

小声でエルンストが教えてくれた。



「ここは俺の秘密の場所だ」

少年のような笑顔をフィーアに向ける。

「幼い頃、よく母上に連れてきてもらった」


静かにフィーアはうなずく。


「俺は夏が嫌いだが、蛍が踊るここだけは好きなんだ」


「はい」


「.....フィーア」


「はい」



「俺が抱くのは娼婦だけだ」


「ヘレナさんから聞きました」



「それでも俺を受け入れるか?」


「....はい」


「お前を愛せないと言っても、俺を受け入れるのか?」


「は....い」


「何故だ?」


「愛してしまったからです。もう引き返せない」



エルンストはフィーアの両手首をつかむと、それを後ろ手に回し抱きしめた。

フィーアはされるまま黙っている。

私たちは一生の愛を誓えない。けれど、愛された想い出があれば私は生きていける。


徐々に熱くなる体。フィーアは、たとえそれが一瞬の愛でも受け入れようと思い始めていた。

きっと後悔はしない。

愛されなくても愛したい。そう思い始めていた。


だから、エルンストに身をゆだねた。