とは言えエルンストは宮廷の女性を抱いたことがない。
ここにファーレンハイトがいれば、「とうとうですか?」と笑っていただろう。




───二人は夜の茂みを歩いていた。

宮廷内の庭には茂みが沢山ある。
皇帝が逢瀬を楽しむためにわざわざ作られたと言っても過言ではなかった。



宮廷の庭にはそんな歴史がある。


パウラに手を引かれエルンストは庭園奥に足を踏み入れた。

近くには小川が流れ、そのせせらぎがひそやかな夜を楽しむ二人の喘ぎ声を消してくれるはずだ。


酔った勢いもあったが、フィーアのわけの分からない態度がエルンストの気持ちをパウラに向かわせていた。


「わたくしを自由になさっていいのですよ、エルンスト様」


茂みに座ったパウラはエルンストに体を寄せてくる。

エルンストの手を取ると、自分の胸元にその手を置く。


フィーアなら絶対こんなことはしない。
そう思った瞬間エルンストの中で何かが切れた。


抱かれたがっているのなら望みを叶えてやるっ。

もうどうなってもかまわんっ。


エルンストはパウラを茂みに押し倒すと、乱暴にその胸元を開いた。


パウラの首筋に唇を落とし、それを下へと這わす。


「ああっ....エルンスト様」


パウラが切なそうな声をあげた。