「エルンスト様はどのような女性がお好みなのですか?」

娘の一人が問いかけると、

「エルンスト様は、わたくしがお好みなのです」

パウラが代わりに答える。

娘は「ほほっ」と羽のついた扇を揺らすと、

「パウラ様のように気の強い女性がお好みとは知りませんでした」

どちらも負けてはいない。


「なんですって?あなたのように、胸もお尻もぺちゃんこな人を女性と呼ぶのかしら?」

パウラはこれ見よがしに胸を突き出すと、「ねぇ、エルンスト様」と肩にもたれかかってくる。

先ほどゲオルグが『エルンストの好み』と言った言葉がパウラを強気にさせていた。


「まあ、はしたない。そのような女性が本当にお好みなんですの?」

扇を口にあてながら、エルンストに色目を使ってくる。


最悪だ。エルンストは吐き捨てたい気分で肘をつくと視線を天井に向けた。


「ほら、あなたのせいでエルンスト様のご気分が悪くなったわ」

パウラは相手の娘をにらみつける。


「ああ、うるさい」エルンストはパウラの腰に手をまわして立ち上がった。

女の闘いは見るに耐えない。


それ見なさい。とばかりにパウラはあ然とする娘たちに、勝ち誇った顔を向ける。


「わたくしたちも静かなところで.....」

うふふ。とエルンストを誘うような怪しい瞳を向けて来る。


一方のエルンストはパウラを気に入ったのではなく、高潔でないのなら、それは娼婦と一緒。どうしようが俺の勝手だ。

それに同じ抱くなら好みの顔のほうがいい。そんな不遜なことを考えていた。