そんな二人を見てゲオルグが声をかけてきた。


「楽しそうだな、エルンスト。パウラはお前の好みだと先ほど言っていたなぁ」

あごに手をあててゲオルグはにやける。

余計なことを。エルンストは苦々しい思いだ。


「まあ、嬉しいっ」

エルンストとは対照的に、ほほを赤らめ、いささかわざとらしさを感じさせながらも大袈裟に喜びの表情を浮かべるパウラだった。


「今宵は二人で存分に楽しむが良い」


「ありがとうございます、陛下」


うやうやしく頭を下げたのはやはりパウラだった。


エルンストは仏頂面をしている。

この女は高潔とは無縁そうだな?

酔ったわりに、そんなことには頭が回る。



一方の皇帝ゲオルグは気に入った娘3人を連れて、早々に退出してしまった。

どこかで偽りの愛を語らい合うのだろう。


残された娘の何人かがエルンストとパウラの間に入って来た。

「「エルンスト様。わたくしたちもお話ししてよろしいですか?」」

上品さを装いつつエルンストの隣を奪い合う。

そんな彼女たちを頬杖をつきながら冷たい視線でエルンストは迎えた。

やはり俺には無理だ。ファーレンハイトの気が知れん。そう思いながら。