「やれやれ」女のあさましさを見るようで背筋がゾッとする思いになりながら、彼女たちを見つめるエルンストだった。

紫のドレスの娘が好みだからとて、わざわざ自分から声を掛けるようなまねはしない。

別に恋人にしようなどとは思っていない。


暇そうに手元のグラスにワインをつぐ。

ボトルは早くも空になりそうだった。

エルンストは酒には強いほうだが、気分がすぐれないせいか酔いが回るのが今日は早かったようだ。

ほんのり赤くなった顔に、ややうつろな瞳。

それでも、やめることなく酒をあおる。

フィーアを忘れたい一心だったかも知れない。


もうどうにでもなれだっ。エルンストはワインのボトルを何本も空にしていった。


「────エルンスト様」


ふいに掛けられた声。


声の主は先ほどタイプだと言った、紫のドレスを着た娘だった。

確か、パルラ・フォン・.....忘れた。

エルンストはことさら無視するわけにもいかず、取りあえず席を勧めた。


どうやら皇帝に相手にされず、狙いをエルンストに変えたようだ。


「陛下も露骨な態度をとられるのだな」ふっと口元を歪める。


「えっ?今なんとおっしゃいましたか?」

意味が分からず、パウラは首をかしげる。


「いや、こちらの話だ」

持っていたグラスをテーブルに置く。