「な〜んちゃって。ウッソぴょ〜ん。」


デビーのあっけらかんとしたその台詞に
イラッとしたのは言うまでもない。


「……ハァ?」


「業火燃え盛る地獄行き〜なんて嘘でぇーす!」


「うざ。」


心の底から思った言葉を口にした。
それでもデビーは依然ヘラヘラと浮遊し続けている。


もし今、手元にハエたたきがあれば、私はこの悪魔を即座に叩き落していたに違いない…。


「うざっ…て、ショックぅ!そんな真顔で言わないでくれよ〜。天使は案外デリケートなんだからね!」




「で……………?
…こんな感動ドラマみたいな試練を私に体験させて、あんたは何を伝えたかったわけ?」



怒鳴るのを抑えて、呆れ口調で聞いてみる。


すると悪魔はお兄ちゃんと似た、
満面の笑顔をしてこう言ったのだ。



「生きて」



たった一言。
無責任なその発言に、
私はカァーッと胸が熱くなり、
自分自身を抑制できなくなっていく。


「はぁ!?そんなこと…簡単に言わないでよ!私…今生きてる事が最高に辛いんだよね!家族もいない、友達もいない、味方になってくれる人もいない!虐められて、でも仕返しする事も怖くって、そんな自分も嫌で、息してるのも…っ、苦しくて…、生きる世界が…此処が私の地獄なんだよ!!!!!人間じゃないアンタに言っても分かんないだろうけど!人間って凄く面倒臭いんだよ!!?以上、分かったか!?もうこの会話終わりっ!これ以上さ!?これ以上私にっっ!もうなんも言わないでよっ!!!」


「そう。生きる事って地獄みたいだよな。
だから、言ったろ?」


「……?」


「地獄行きだって。」


「何言ってんの…!?たった今!地獄行きが嘘だともアンタ言ったよね!!?」


「"業火燃え盛る"地獄行きは嘘。
でもその代わり、
諦めないで地獄みたいな人生を生きてよ。」


「…っ意味わかんない!!」


「俺はお前に自殺なんてして欲しくない。
もう、大切な人が死んでいくのは見過ごせないんだよ。」


「……え……………?

あんた………それ……ナオが…………」


そして、
馬鹿な私はようやく気がついた。


デビーの首元に光る…


見覚えのある雫のチャームがついたネックレス。


ナオがお兄ちゃんから貰った、


お母さんの形見のネックレス…。