---ドサッ
次の瞬間、
私の頭は父親から解放されて
その大きな図体は私もろとも倒れ込んだ。
静けさに包まれて
いつまで経っても私の上から起き上がらない父親を
恐る恐る動かしてみる。
ベタリ、、、
そんな感触が私の手につくと、
私の鼓動が慌ただしく動き出す。
暫くは、
ただ呆然と真っ赤に染まる自分の手を眺めてた。
私の嗅覚を刺激する
微かに漂うガスの匂いと
充満する、鉄の匂い。
思考回路が思うように動かない。
「…やっちゃった…。」
お兄ちゃんは、そう言って泣きながら笑った。
手に持った包丁からは
赤黒い血が刃先に向かって垂れていた。