「冗談じゃない!あんたは人助けしたつもりかもしんないけどね!私にとっちゃありがた迷惑だよ!なーにが天使よ!いっそ悪魔の方がよっぽど良かったわよ!!!」



デビルに向かって声を荒げる私に、
その場にいた全員が怪訝そうな顔してこちらを伺っていた。



「ばーか。俺の姿は今お前にしか見えてないんだぞ。このまま俺に向かって文句言ってたら頭のおかしな奴だと通報され兼ねない。やめておけ。」


「通報?上等だね!私なんてどうせ人生終わってんだし、どうなろうと構わない!通報したきゃすればいいわ!」



と、大口を叩きつつ、周囲の目が痛い。



「だ〜、もう!ほんと頑固!面倒なヤツ捕まえちまったなぁ〜。」


「けっ!だったら早く解放しな!あっち行け!シッシッ!」


「ここじゃ人目が多いけど…仕方ないか。よっ!」



パチン…ッ---!





「!!!」





デビルが再度指を鳴らした瞬間、突如周囲が真っ黒になった。



人もいない、地面もない、何もない、


真っ暗な空間。






ただ在るのは、私という存在と、宙に浮くデビルだけだった。



「な…なにこれ。なにがどうなってんの!?うちら駅にいたじゃん!それなのに…、ここどこよ!?」


「慌てるな。大丈夫。瞬間移動したわけじゃない。俺がちょっと君の意識の中に入らせてもらっただけだから。君の本体は仮眠状態にあるだけだよ。ほら、こんな感じで。」




ボワンと、デビルの横にイメージ図のようなものが浮かび上がり、私はそれを覗き込んだ。


そのビジョンの中には、大勢の人に囲まれて、倒れ込んでいる自分の姿が…



「…って、全然大丈夫じゃないじゃん!めっちゃ人集まってきてるし!早く元に戻しなさいよ!デビー!」


「で、…デビーって…まさか…俺の事か?もっとマシな呼び名はなかったのか…?」



「別に呼び名なんてどーでもいいでしょ?それより早く元に戻せって言ってんの!天使だからって何しても許されると思わないでよね!職権乱用!神様に訴えるよ!」


「あーはいはいはい。」


「こちとらね!1分1秒でも早く死にたいんだっつうの!」






その言葉を口にした瞬間、



その場の空気が変わるのが分かった。




「1秒でも早く死にたい…だと?」



天使の妖精が、

本物の悪魔の顔に変わるのを一瞬見た。




その悍ましさに、


「………。」



私は声を発する事すらできなくなる。