「…とは言ったものの、あたしってつまんない人間だからさあ。話せることなんてなにもないよ?」
『僕だってそうですよ。友達なんていませんし。』
「まじか、あたしと一緒じゃん。なんか似てるね、あたしたち。」
またひとりでに笑って、公園の出口の柵に寄りかかる。
変な人だなあ。
声からして男だってのはわかるし、同じくらいの年齢だってのもなんとなくわかる。
渋い声でもなければ可愛い声ってわけでもないし、低い声でも高い声でもない。
ただやっぱり、他人を落ち着かせるような、そんな優しい声を持った人。
「…そういえば、あたし勝手にタメで話してるからあなたも敬語やめたら?同じくらいでしょ?」
『…まあ、そうだね。僕は17だけど、きみは?』
「やっぱり一緒。あたしも17。」
そんな些細なことが嬉しくて、あたしはまた笑う。
そのとき、耳に当てていたスマホが震えた。
画面を見ると、お母さんから「何時だと思ってるの!」とお叱りの連絡。時間を見ると、11時半を回ったところだった。
「やば…あたし帰らなきゃ。ごめん、もう切るね。」
『ああ…うん。』
たった数分の会話だったのに、どこか名残惜しくて、あたしはスマホを握りしめる。
「…また明日も、電話していい?」
なんだか恥ずかしくて、小さな声で彼に問いかける。
少しの間があって、電話の向こうで彼が笑ったような気がした。
『うん、また明日。』
その言葉を最後に、通話が終わったことを告げる無機質な機械音が聞こえ始める。
あたしはスマホを耳から離して、空を見上げた。
真っ黒なキャンバス。そこに散らばる星たち。
一瞬、そのきらめきのひとつが尾を引いて流れたような気がして目を凝らした。
けれど、いくら待っても星空はただ輝くだけで。
気のせいかなあなんて頭を掻きながら、再びあたしは歩き出した。