自分の部屋の扉を勢いよく閉めて、脱いだ靴を揃えることもしないまま布団の中に転がり込む。
そこでダンゴムシみたいに丸くなって、体育座りをしながらぎゅっと両手の指を絡めた。

叫び出しそうになる衝動を抑えて、膝の中に顔をうずめる。
もう、何もかも忘れてしまいたい。

こんな思いするくらいなら、最初からずっとひとりでいたかった。

お父さんとお母さんが死んで、そのままひとりぼっちで生きていたなら、莉央ちゃんがいなくなるのを怯えることもなかったのに。

なんとなく息苦しくなって、布団の中から顔を出す。
夏とはいっても朝、なおかつ地下の空気はひんやりとしていて、思わず身震いをした。

そのとき、机の上に置いてある端末が目に入った。

…一瞬よぎった考えを消し去るように頭を振る。

なにを考えてるんだ、僕は。まだ朝の8時だぞ?いつも電話してるのは夜なのに、こんな朝っぱらからかけるなんて、非常識すぎる。

それでも、一度頭に浮かんだその考えは、その声は、なかなか消えてはくれない。

なんで僕は、こんなときにこんなことを思うんだ。

あの子の──ひなたの声が聞きたい、だなんて。