靴を脱いでフローリングに足をつける。
慌てて部屋を出てきたから裸足のままだ。

隆さんの隣に並ぶように床に膝をつけ、二段ベッドに横たわる莉央ちゃんの顔を覗き込む。

莉央ちゃんは、はあ、はあ、と苦しそうに息を漏らしながら、いつもと同じように僕に笑いかけてくれた。


「莉央ちゃん、ちょっとごめんね。」


そう一言断ってから、汗ばんで濡れた前髪をかきあげ、小さな額に手のひらを乗せる。

触れた瞬間、あまりの熱さに驚いて目を見開いた。

莉央ちゃんは「お兄ちゃんの手、冷たくて気持ちいいね。」と笑ったが、僕の手が冷たいんじゃない。莉央ちゃんが熱いんだ。

恐らく38度後半くらいはあるんじゃないだろうか。

縋るように隆さんを見ると、隆さんは膝の上で拳を握りしめ、何かに耐えるように俯いていた。


「とりあえず…水をたくさん飲ませて。あとは、汗をたくさんかいているようなので、着替えさせてあげてください。

わかってると思いますけど…今の時代、風邪をひいただけでも油断はできないですから、病院が開き次第連れて行ってあげてください。」


お父さんが死んだときのことを思い返しながら、しどろもどろに言葉を紡ぐ。

隆さんはその間じゅうずっと僕を見つめて、僕がそれを言い終えると同時に小さく頷いた。