「う…うん、そうだね。見たいよね…」
思ってもいなかった反応にあたしは戸惑って口ごもる。
大した考えもなく発した言葉だけど、彼にとってはそうでもなかったのかもしれない。
『…男なのにカッコ悪いって思うかもしれないけどさ、俺…流れ星を見るのが夢なんだよね。』
「…夢?」
『そう、夢。俺の名前、流れ星って書いて流星じゃん?
単純なんだけど、そのせいで昔から天体の写真とか本とか読んでて…好きなんだよね。星が。
だから、見てみたいんだ。流れ星。見たこと、ないから。』
そうなんだ、と返してふと空を見上げる。
綺麗な星空。だけど、一向にその粒が流れる気配はない。
こんな都会のど真ん中じゃ見えるものも見えないか。
「…見えないね、流れ星。」
『…はは、そうだね。』
もっと街の光が少ない田舎にでも行けば見えるかもしれない。
そんなことを考えながらぼんやりとしていると、流星の『今日ちょっと疲れちゃったから、もう寝るね。』という言葉。あたしが相槌を打つと、電話は切られた。
今日はあんまり会話が弾まなかったなあ。
ベンチから立ち上がって、うーん、と伸びをする。
________流星群、見たいな。
耳に残った彼の声。
でも、それにしても。
なんで流星の声は、あんなに悲しそうだったんだんだろう。