「え、あ、あたし?!」

「そう!あーたーし!ひなたって顔可愛いしモテるのに、なんで彼氏作らないのかなぁって。」



困った。適切な返事が思い浮かばない。


なんでってそりゃ、好きな人がいないからだ。でもそんな陳腐な答えで納得してもらえるとは思えない。



「この前とかひなた、サッカー部のキャプテンに告られたのに振ってんの!ありえなくない?」

「ええ?!あの村上先輩?!嘘でしょ?!」


そう叫んで驚愕に目を見開きながらみんなはあたしを見る。


…なにがそんなにおかしいんだろう。


憧れの先輩だろうが芸能人だろうが、好きでもない人と付き合って、それが『恋』だなんだと呼べるんだろうか。



「えーと…ほら、あたし…男の人とか苦手だから…」

「そうなの?初耳なんだけど。」



初耳で当然だ。今考えたんだから。



「あたし、父親は仕事でほとんど家にいないし…兄弟とか、いないから…男の人とあんまり喋らないんだよね。だから、慣れてないの。」



父親は仕事でほとんど家にいない、ってのは本当のことだ。最後に帰ってきたのは一ヶ月くらい前だった気がする。


兄弟だって…いない。いないってことにしてる。



ちくりと痛んだ胸を無視して、お得意の愛想笑いを浮かべた。