_____プルルル、プルルル…



緊張と期待を胸に抱きながらコール音を聞く。


出てほしい。けど少し、怖い。


コール音と同じくらい激しく鳴る心臓の音が聞こえる。


もしかしたら昨日のは偶然で、もうこの電話番号が繋がることはないかもしれない。


そんな不安でまぶたをぎゅっと閉じていると、少しして『…もしもし?』という声が聞こえてきた。


ノイズ混じりではあったけどわかる。昨日と同じ、あの子だ。


望んでいた声であったはずなのに、それが聞こえてきた途端、自分の身体が硬くなるのがわかった。


…ああ、昨日のは夢じゃなかったんだ。



「も…もしもし。」

『約束、覚えててくれたんだね。』

「約束?」

『そう。また明日、って約束。』



あんな決まり文句のような言葉が『約束』と呼べるのかは謎だけれど、彼女の嬉しそうな声を聞いたらそんなことどうでもよくなった。


…僕の電話を、待っててくれたんだ。


それだけのことがどうしようもなく嬉しくて、上がりそうになる唇の端を必死に抑えた。



『あのさ、あたし…昨日きみに聞き忘れたことがあるんだよね。』

「聞き忘れたこと?」

『そう。名前教えてくれない?呼び方がわからないと今後不便だよ。』



今、名前を聞くとともにさらりと『今後』と言われた気がしたんだけれど、気のせいだろうか。


だとしたら…このやりとりが今後も続くと期待していいんだろうか。



「僕は…流星っていいます。よろしく。」

『流星くん…流れ星?かっこいいね。あたしの名前はひなた。春って書いて、ひなたって読むんだ。よろしくね、流星。』



なぜだろう。名前を呼ばれただけなのに、胸の奥がジンと熱くなってくすぐったい。


ひなた、と頭の中で何度も繰り返し呼んだけど、女の子を呼び捨てにするなんて初めてで恥ずかしくて、どうしても口に出すことはできなかった。