さっきまで遠くで唸っていた雷が、わたしを呼ぶようにすぐ近くで轟きはじめた。


わたしはひかれるように窓辺に近づくと、割れたガラスの窓を全開にした。


吹き込んでくる風は涼しくて、ずっとわたしに絡みついて離れなかった湿気を払っていくようで。


体の中の空気も入れ換えたくて大きく息を吸って吐くと、吐き出すたびにどんどん体が軽くなる気がした。



てるてる坊主 てる坊主


あ~した天気にしておくれ



わたしは歌いながら窓のカギの部分に、奈穂実の顔が描いてあるてるてる坊主を吊り下げた。



もうすぐ終わる。

長かった雨の季節がやっと明ける。



そしてわたしは風に溶けるように消えていく。






【完】