その途端、多華江は怒りくるったように大声をあげ、直前まで静かに泣いていた人とは別人のようになった。


「触らないでってば! 私はね、麻梨を取り返すのよっ! 」


そして思いきり先生をドンッと突き飛ばした。

式場内から動揺の声があがり、校長と教頭先生が山崎先生に駆け寄り、多華江には翔平が寄り添った。

床に倒れた山崎先生は体の痛みをこらえながらも

「多華江さん、落ち着きなさい。……それを渡してください」

と手を伸ばしたけれど、多華江は謝ることもなく、そして答えを返すこともなく、冷たい横目で先生を見ただけでまた棺桶に視線を戻した。


「由梨と麻梨はいつも一緒だもんねー。……大丈夫、寂しくなんてないからね。ママが一緒に逝かせてあげるから」


まるで子供を寝かしつけるかのように、棺桶にささやくように言い聞かせると、また力なくしがみついて泣き始めた。