その光景は“もしも我が子を殺されたら”と、自分に置き換えて考える保護者たちのやるせない涙を誘っていた。


「あの二人、本当に死んだんだね」


祭壇を見ながら奈穂実がポツリとつぶやいた。

数日間のいがみ合う関係だったけれど、今の奈穂実はどことなく寂しそうに思える。


山崎先生は生徒が全員が座ったのを確認すると、校長と教頭先生と連れだって最前列に座っている町長に挨拶に行き、何度もペコペコと頭を下げはじめた。

そこで山崎先生は町長に何かを言われたようで、困惑した表情を浮かべながら祭壇に近寄っていった。

そして多華江の側にしゃがむと話しかけて、多華江が握りしめている何かを取ろうとした。