病院につきメモに書かれてある

病室の前で止まる

深呼吸をして息を整え

ドアをノックする

「はーい?どうぞ」

部屋の奥から愛おしい声が聞こえ

さっきまでの涙がまたこみ上げそうになる

喉の奥があつい

ドアをゆっくり開けると

目を見開く涼

少しやつれた?

ねぇ涼、怒ってる?

なんで来たって追い返されるかな

「杏梨…なんで…」

「総くんから聞いた…全部聞いたよ…」

総のやつ、そう怒ったようにつぶやく涼

「私、涼といたいよ。私涼が好き!涼じゃないとダメなの!」

「…帰れ」

やっぱり突き返そうとするんだね

「やだ!帰らない!」

「俺が!…どんな思いで別れを告げたと思ってんの…。これじゃ意味無いじゃん…」

「別れる必要なんてないよ」

「杏梨…、お前はわかってないよ。俺は脳にも腫瘍がある。いつお前のことをわからなくなっても、おかしくないんだよ?お前との思い出を忘れてしまうかもしれない。いつ死ぬかもわからない。俺はお前が、杏梨が悲しむ顔なんて見たくないんだよ。たとえお前のことが、わからなくなったとしても、お前だけには悲しんでほしくないんだ。」

「忘れてもいいよ。また思い出をギリギリまで作ればいいじゃん。わからなくなってもいいよ。はじめましてから始めよう?悲しんでほしくない?私は涼と離れることのほうが悲しいし、辛いし、それこそ不幸なの!涼といるのが私の幸せなの。涼以外愛せないよ。だから最後まで涼のこと愛させてよ。私を信じてよ…」

「なんなのもぉ…ふざけんなよ。なんでお前はそうなんだよ!馬鹿じゃねぇの?人がせっかく…いや、違うな。そうじゃない、…杏梨、ごめん、俺が間違ってた。ありがとう。」

『杏梨。俺にお前を最後まで愛させて。』