今離れたら
離れ離れになってしまう気がした
彼女は微笑む
だけど切なそうに笑う
笑ってるけど心からの笑顔じゃないようで……
切なさがこみあげてきた
ズキンズキン……胸が痛む
_________________________________________
一緒に帰ろうと、外で待っていた。いつもよりも遅いなぁ……声が聞こえてきて、裏口に行った。
美緒ちゃんが別れるように言われていた。別れないって言ってくれて、うれしかった。初めて、気持ちを聞いた
ちゃんと、想われていたんだ……
美緒ちゃんと2人で歩いて帰る。
私じゃ……って、言われて……このままじゃどこか遠くに行ってしまう気がして焦った。
「ずっと俺の彼女でいてくれ……」
「はい……」
俺を見つめる
「どうしたの?」
「もてるから……心配だよ……」
か……かわいい……
彼女ができるって
なんで考えなかったんだろう
私が入る隙なんてなかったんだ
だからって諦められない
_________________________________________
気になっていた客。たけど、後輩の美緒と付き合い始めるなんて……
同じ大学の子が美緒の高校の同級生だった。美緒の元彼と付き合ってたって……それなら、私にも脈あり?美緒に両親がいないこと、貧乏なことを聞いた。彼の家の電話は知っていたから、彼の母親に美緒のことを話した。美緒がいなくなれば……
美緒が仕事を辞めた。2人が別れたらいいとは想ったけど、まさかこんなことになるなんて……
逃げられない現実
心に抱えてる傷……痛み……
心が深く傷ついている
だからこそ誰かとつながっていたかった
私はただ愛が欲しかっただけなの
胸が痛くて苦しくて……
私の想いが届くことは……
もうないんだ
好きだけどうまくいかないんだ
_________________________________________
仕事をしている美緒。知らない人に呼び出された。
龍一の母親だった。
「あなたに龍一と付き合うのをやめてほしいの。」
なんで……
「あなた、ご両親がいないそうじゃない……そういう人と付き合うのは……うちの財産が目当てだって話も聞くし……」
「そんなこと……」
「あなたと、うちでは……」
まただ……なんでいつもこうなるんだろう……
「もう龍一に会わないで……」
彼は好きだと言ってくれた。だけど、その気持ちだけでは乗り越えられないことがある。
ここで働いていたら、また会っちゃう……結局、喫茶店を辞めることにした。
家に帰ると、気づけば頬を涙が濡らしていた。部屋の中でうずくまって、すすり泣く声だけが響きわたる。涙は止まってくれない。
そんな時に、兄が帰ってきた
「美緒……どうしたんだ……」
今日のことを話した。
「私は恋なんて、しちゃいけないんだね……」
「美緒は、何も悪くない。」
「和くんがいてくれてよかった……」
「俺はいつでも美緒の味方だよ。だから、もう泣くな」
この家も、彼は知ってる。ここにいちゃダメだ。
「たくさん優しくしてくれてありがとう。たくさんの楽しい思い出をありがとう。またいつか……」
書き置きを残し、ここにきたときに持ってきた荷物を持って、深夜家を出た。だけど、行くところなんてない。ネカフェで夜を明かす。
以前仕事をしたお手伝い紹介のところに行った。わけを話したら、他の所を紹介してもらえた。
もう恋なんてしない。
彼女がいなくなった
彼女のことを探してた
毎日……
好きな人に会いたいって思うのは普通だろ?
ねぇ……俺のこと好きじゃなかったの?
_________________________________________
美緒ちゃんに電話もメールもつながらなくなった。喫茶店に行けば……だけど、喫茶店を辞めていた。じゃ、家に行けば……
美緒ちゃんの家に着いた。出てきたのは、男だった。
「美緒なら、出て行った。」
美緒ちゃん……男と住んでいたなんて……
「どこに行ったんですか?」
「俺にもわからない……お前さえ現れなければ、美緒が出ていくことはなかったのに……もう、帰ってくれ」
目が怒りに満ちていた……
彼が誰なのかわからないまま……俺は美緒ちゃんを好きだけど、何も知らなかったのかもしれない。俺、失恋したんだ……
終わった恋をあきらめて、また今までと同じ生活に戻るはずだったのに……なにやってんだろ俺……気づけばどうしようもないくらい本気で好きになっていた。生きている限り永遠に消えない気持ち。何をしていても、美緒ちゃんのことを思い出していた。
お願い……俺と美緒ちゃんを……もう一度会わせてください。いるかわからない神に、祈った……
初めて会った時から、好きだった。初めての恋だった。一緒にいられるだけで幸せだった。それなのに、いなくなった。
もう美緒ちゃんとはダメなんだなと思って、ヤケになって、心の穴を埋めたくて色んな子とつきあった。他の女と付き合って……だけど心の穴を埋めてくれなくて、別れて……それを何度も繰り返して……
そして、俺は……そんな俺に嫌気がさす……
俺は一生ひとりでいい。ひとりで生きていこう。心に穴があいたまま……一生忘れられない人……忘れられないのならば……一生抱えて生きてゆく
再会した彼女は初恋の人だった
忘れていた恋心を思い出す
前よりもかわいくなってて
あきらめたつもりだった恋
再会して思い出した
そしてまだ彼女が好き
こんな日がくるなんて
思っていなかった
だけど彼女は俺のことを覚えてなかった
_________________________________________
俺の家に新しいメイドがきた。一目でわかった。初恋の人。
高校生の時、交通事故で足を怪我した。日常生活はできるようになったけど、サッカーを続けられなくなって荒れていた。そんな時に出会った人。院内の喫茶室でジュースを飲んでいた。近くでなんか揉めてる人達がいた。「あんた達親子のせいで息子が怪我をした。もう会わないで……」
「病院内でやめてください。」と、看護師に言われて出て行った。
後に残ったのは、女の子と看護師……
「あなたのせいじゃないから、気にすることないわよ。」
「いえ、言われてもしょうがないです。怪我をしたのは事実ですから……」
そこへ、おばあさんがきた。
「美緒、遅くなってごめんね。もう大丈夫?」
「うん、もう平気だよ。帰ろう……おばあちゃん」
2人が帰っていた。残っていた看護師に聞いた。
「あの……彼女何があったんですか?」「騒がしくて、ごめんね。」
「彼女のお母さんが交通事故にあって、亡くなったのよ。その知らせを聞いて、過呼吸の発作をおこして処置が終わったところで、あの人たちと……」
そのあとも、何度か病院でみかけた。誰かのお見舞いにきてるみたいだけど、看護師に花を渡して帰っていく。この間の看護師に聞いたら、亡くなった母親の恋人で、この間の人達の子供か……
初めて声をかけた
「誰かのお見舞い?」
「はい。」
「会っていかないの?」
「お花を届けにきただけですから……」と、優しく微笑んだ。
「あなたは……?」
「足を怪我してリハビリ中なんだ」
「早くよくなるといいですね。」と、花束の中から一本抜いて、俺にくれた。
それが彼女を見た最後だった。入院していた人が退院したらしい。
それから、リハビリを頑張って普通に生活できるようになった。サッカーはできなくなっただけ……頑張って勉強して、結構有名な大学に入った。そのあとは、父親が経営している会社に勤めていた。多分、あの時彼女に会わなければ……もっと荒れていたんだろうな……柄にもなく、あの時の花を押し花にして、ずっと財布に容れていた。
新しいメイドが入った。俺はすぐに気づいたけど、彼女は俺のことを覚えてなかった。一度話しただけだし……
淳一の初恋の思い出……
好きだった彼と別れて
新しい生活を始めた
だけどそんな急に変われない
忘れなきゃって思うのに
元気にしてるかなとか考えてる
全然ダメだ
_________________________________________
なんとか仕事も順調に進み、兄に連絡をした。彼のことも聞きたかったし……
あれからすぐに彼が来たことを聞いた。自分から離れたのに、離れたのがよかったのかもわからなくなった。だけど、そのあと「美緒と別れたあと、あの喫茶店の店員の子と付き合っていたぞ……」って、聞いた。忘れられないのは、私だけだったんだ。私は何を期待していたの?なんかバカだよね私……ほんとバカ……もう忘れなきゃ……
私……幸せになれる気がしない。どうやったら、幸せになれるんだろう……
「どうせ私なんて……」
自分に自信がなくて
どんどんひねくれていく心
だけど優しさにふれて……
_________________________________________
仕事にも慣れてきた。1人でも生きていけると思っていた。だけど、心の底では寂しさを埋めてくれる人がほしかった。
お客様がきた。なんでこんなところで出会ってしまうんだろ……
「なんで、こんなところにあんたがいるのよ……」
「ここで働いているので……」
「ふぅーん……そうなんだ」
両親がいないことや、高校生のときバイトばかりしていて、おばあちゃんと貧乏な生活をしていたことを話していた。確かに……全部事実だもの……ここも辞めなきゃなのかな……
「ほんと……いやね……」
やっぱり……いやだやね……
「わざわざそんな話をするなんて……桜井さんはキチンと仕事をしているし、そんなの関係ないわよ。」
え……
「そんな貧乏な人を雇うなんて……」
「あなたって、本当に性格悪いのね。息子とお見合いって話だったけど、こんな人じゃ嫌だわ。今回のお話はなかったことにしてくださいね。おばさまも、こんな人を紹介するなんて……2人とも、もう帰ってきださいね」
帰っていく2人……
「奥様……隠していてすみませんでした……」
「言いたくないことくらい誰にだってあるわよ。気にすることないわ。真実ってそんなに大事?あなたが悪いことをしたわけじゃない。ちゃんと仕事をしてるんだから、それでいいのよ。」
ひねくれていた心が、優しさにふれて……
時間が心の傷を癒やしてくれたのかもしれない
違う……
みんなのおかげで……
毎日……毎日……同じように流れていく時間
私はまだここにいたかった
私は今はとても幸せ
_________________________________________
いつのまにか、季節は夏へと移り変わる。ギラギラの太陽を見上げたら、目が痛いくらいに眩しかった。まるでここの人達のように……まぶしかった。
なんか嬉しい。これから何かがおこりそうで、ワクワクする。この間まで、あんなに落ち込んでいたのに、私って単純……
いつまでも落ち込んでなんていられない。
涙があふれて……止まらず……
次から次から頬を伝う
寂しさと切なさで押しつぶされそう
胸がグッとつまって痛い
ひとりぼっち……
_________________________________________
仕事が終わり、部屋に戻る。ひとりぼっちでいると、涙が止まらない。何やってんだろ……私……深いため息……
1人になると、寂しくてたまらなくなる。私には、誰もいないんた……そんな時、話す相手もいない……