Tシャツにスウェットといういたってラフな格好に着替える。


肩にタオルを掛けたまま部屋に戻ると、携帯をいじっていた千華が顔をあげる。


「待たせてわりぃ」


「ううん大丈夫!」


千華は風呂上がりの綾人を見て少し頰を染め目をそらす。


ああ、可愛いやつと思いながら部屋のドアを閉める。


床に座っていた千華をベットに腰掛けるように勧め、自分は勉強机の椅子に座る。


「あーくんの部屋なんて何年ぶりだろうって考えてたんだぁ」


「小学校以来だな」


千華がキョロキョロと部屋を見渡す。


「どうかしたか?」


「綺麗な部屋だなって思って。男の子の部屋って、あーくんの以外入ったことないからよく分かんないんだけど、クラスの子と話してたら弟とかお兄ちゃんの部屋が汚い!ってよく聞くから」


「千華のとこは姉妹だしな。千尋は元気?」


千尋とは3つ離れた千華の妹である。


「うん。最近やっと自分の部屋がもらえて喜んでる」


「そっか」


そこからしばらくはいつものように、何気ない会話が続いた。


「あ、そういえば!昨日大垣くんに会ったよ」


「へえ、どこで?」


大垣は中学の同級生で、千華は3年間同じクラスで出席番号が前後だったので、千華がよく話せる男子の1人だ。


「駅!久しぶりだったから、いっぱい喋っちゃった」


楽しそうに語る千華の一方で、綾人の胸中にはイライラが募る。


燐と拓巳との会話が頭をよぎった。