「まず私が持っている魔剣レーツェルは、神秘の力をもたらす聖剣」
 
オフィーリアは鞘からレーツェルを抜くと、刀身を俺に見せるように上げる。

「神秘の力と言っても、具体的には良く分かっていないの。でもきっと特別な力のはず」
 
おそらくその力は俺たちでは測りしれない物なのだろう。だがオフィーリアの身が危機に瀕した時、必ずその力を見せるはずだ。

「後はあなたが言っていた魔剣サファイアと魔剣マール。そしてそれ以外の魔剣の名前は」
 
彼女が魔剣の名を口にしようとした時、掲げていたレーツェルの刀身が金色を帯び始めた。

「なんだ?」
 
それを見て驚いたオフィーリアは言う。

「どうしたの? レーツェル」
 
オフィーリアはレーツェルと会話するように言葉を紡いでいく。

そのオフィーリアと会話しているであろう、レーツェルの言葉が俺の耳に届くことはない。きっと主にしか聞こえないのだろう。

「えっ……魔剣の事を言ってはいけない?」

レーツェルはオフィーリアの手の中からすり抜けると俺の前まで飛んで来る。

「な、何だよ?」
 
じっと俺を見ているのか、レーツェルは微動だにせずただ目の前に浮いている。

「レーツェル! 私は彼を信じてるの! だから話しても大丈夫よ!」
 
駄目だと言うようにレーツェルは左右に揺れる。

「どうしてですか?!」
 
レーツェルはオフィーリアの元に戻ると彼女に何かを告げる。

「彼が魔剣を持たない限り話す事は出来ない?」
 
その言葉に俺は目を丸くした。

レーツェルからしたら見ず知らずの俺に、魔剣についてべらべら喋るわけにいかないんだろう。

いくらオフィーリアが俺を信じていても、レーツェルにとって俺はまだ信用に値する存在じゃないって事だ。