「違うよ。俺が調べていたのは命の宝石と星の涙についてだ」

「えっ……」
 
彼女は驚いて目を見開く。
 
きっと自分のために情報を集めているなんて、思っていなかったのだろう。

「私のために?」

「もちろんだ。言っただろ? 諦めるのはまだ早いって」

「そう、だけど……」
 
オフィーリアは辛そうに視線を下に向ける。そんな彼女の手を優しく取る。

「ブラッド?」

「心配するな。必ず見つけ出してやるから」

俺の言葉に軽く笑ったオフィーリアは小さく頷いた。

「あとさ、お前に一つ聞きたい事があるんだ」

「私に?」

「昔のエアとトートについてだ」
 
オフィーリアは首を傾げると聞いてくる。

「どうしてそれを私に?」
 
俺は持っていた書物を彼女に見えるようにして言う。

「この書物にはエアとトートが戦争を終わらせた事と、魔法を与えたことだけが書かれている」
 
オフィーリアは書物に目を向けると目を細める。

「それしか書かれていないの?」

「そうだけど?」
 
彼女は数秒考え込んでから口を開く。

「ちょっと見せてもらっても良い?」

「ああ」
 
俺はオフィーリアに書物を渡す。彼女はエアとトートの事が書かれているページを見つけると目を見開く。

「本当にこれしか書かれていないんだ……」

「オフィーリア?」
 
オフィーリアは信じられないとでも言うような表情を浮かべていた。

「もしかしてそこに書かれている事は、偽りだったのか?!」

「う、ううん。間違ってはいないけど」
 
じゃあいったい?

「ここには……記されていない事がたくさんあるの」

「記されていないこと?」
 
オフィーリアは言いづらそうに口を噤んだ。でも直ぐに決心したように俺に目を向ける。