エアの末裔──
 
人々に魔法の知識を伝えたのはトートだと言われているが、実際に魔法を広めたのは彼等とも言われている。
 
でも人々はそんなエアの末裔の魔力に目を付けた。そのためエアの末裔たちは、自分たちの力を狙って再び争いが起こらぬよう、人々の前から姿を消したと言われる。

「エアの末裔の魔力ってのが、星の涙のことなんだろうな」
 
俺はこの書物を読んで星の涙の存在を知った。
 
星の涙──
 
エアが内に秘めていた雫とも言われており、どの願いも全て叶えてくれる宝石であり一つの雫である。
 
だがオフィーリアは言っていた。星の涙は人の願いは叶えてくれない。

きっとここに記されている内容は、作者による妄想か何かだろう。

「俺の欲しい情報は……これじゃない」
 
なぜエアの末裔だけ短命の種族なのか、どうすればその呪いから逃れる事が出来るのか。

トートではなくなぜエアの末裔だけ──

「あれ?」
 
エアの末裔が居るならトートの末裔だっているはずだ。

だがトートについて記されているのは、エアと戦争を終わらせた事と人々に魔法の知識を与えたことだけだ。

「トートはどこに行ったんだ?」
 
ここじゃあこの先を調べるのは無理だ。

「やっぱりあそこに行くしかないか」
 
今後の活動を頭の中で練りながらはしごから下りる。

すると書斎部屋の中に俺の好きな匂いが漂い始める。

今夜の夕食のメニューだろうか? となるとこの匂いは。

「ブラッド」
 
廊下の方からオフィーリアの声が聞こえ振り返る。

「どうした? オフィーリア」

「夕食が出来たからミリィに呼んでくるように言われたのよ」
 
彼女はそう言いながら書斎部屋の中に入ってくる。

「す、凄い書物の量だね」

「まあな。全部父さんのだけど情報を集めるならここかと思ってさ」

「情報ってさっき依頼に来ていた人たちのですか?」
 
オフィーリアの言葉に頭を左右に振り彼女の側に寄る。