「では、お話を伺いましょう」

「実はブラッドさんに、ある宝石を取り返して欲しいのです」

「ある宝石とは?」
 
ローレンは苦しい表情を浮かべると、娘のマナティの髪を優しく撫でる。

「娘マナティの、母親の形見の宝石です」
 
その言葉に俺は目を丸くした。

母親の形見の宝石……か。
 
そこで俺はオフィーリアのお母さんの事が脳裏を過っていた。

「マナティのお母さんは?」

「この子が3歳の時に病気で……」
 
ローレンはマナティを膝の上に座らせる。
 
まだ小さいのに母親を病気で亡くすなんて……。

「それは辛かったでしょう」

「はい……妻が亡くなった時はとてもショックでした。ですが私よりもマナティが……」
 
ローレンの言葉に首を傾げる。

「この子は母親の死を知ってから、一言も言葉を発していないのです」

「えっ……」
 
言葉を発していないって、母親を失ったショックで話せなくなったってことか……。

「本当に話せないんですか?」

「はい……」
 
俺は視線を下に投げているマナティを見つめた。その瞳から光は失われ、どれだけ彼女がショックを受けているのかが伝わってくる。
 
そうか……それで盗まれた母親の形見の宝石が戻れば、少しでも話せるようになると思ったんだ。