私が中学1年の頃の夏…

幼馴染の親友と近所の図書館で勉強しようとした。

私達はお昼ご飯を食べてから正午12時に

幼馴染の家(自転車で2分くらい)に

集合という予定だった。

幼馴染は時間にルーズな方だったから、

私は12時ぴったりに家をでた。









案の定、幼馴染は私が彼女の家についても

まだ、支度の途中だった。

私は彼女の母親と世間話をしながら

彼女、樋口 月(ひぐち つき)を待っていた。

つきは、それから5分くらいしてやっと

家の外に出てきた。




「ゆさ、ごめーん。待った?」

どこぞやのカレカノ風に言う

憎いくらいに可愛い幼馴染に皮肉をいう。

「待ってないと思った?」

つきはへへへっと可愛いらしく微笑んで

自転車にまたがった。

「それじゃあ。ゆさ、出発進行~‼」

テンションがいつもより高いつきに

呆れながらも私は微笑み返した。




私達は普段は通らない小道か、

普段通りの大きい道路のどちらから

図書館に行くのかを迷った。

今日はつきが遅刻した(いつもそうだが…)

ということで、何様だよと思いながらも

つきは私に選択権を与えてくれた。


私は車が自分の横を通るのが嫌いだったので、

普段はあまり通らない小道を選択した。

「小道にするの⁉

つきはね、意外にここを通ることが多いよ。」

「へーそうなんだ。ってかつき、

最近誰と帰っているの?」

そこから世間話が始まった。

つきとの会話はいつものように弾んで、

図書館まであと少しというところだった。





ブーン~~

後ろからバイクのエンジン音が聞こえた。

私達は道の端によけると、バイクは私達のすぐ

隣を爽快に走っていった。

そして、バイクは十字路の左側を曲がり、

なぜか、フルフェイスのヘルメットを

かぶった人はバイクから降りた。

その周りには畑がたくさんあったから、

農家さんかな?と思って挨拶をしようとした。



今思えば、農家さんがバイクを乗り回し、

フルフェイスのヘルメットで収穫をするなんて

おかしいと思うが、

この当時は少し違和感を抱いただけだった。




私が″こんにちは″のこの字に口を開けて、

フルフェイスの顔を見ながら挨拶をしようとすると、

フルフェイスは私のリュックに左手を伸ばした。

私は驚いて何も考えずに今まで出したことのない

位の大声で「キャー」と叫んだ。

私の右側にいたつきは声も出せずに驚いていた。

私はフルフェイスの左手に何か光り輝くような

ものが見えた気がした。

私は自分の身を守ろうと必死で叫んだが、

身体は固まっていた。

私が叫ぶとフルフェイスは怖じ気づいたのか、

バイクをその場に置いて、

私達が行こうとしていた道へ走っていった。

私は

「つきっっ!!」

と声をかけて自転車の進行方向を変え、

思い切り自転車をこぎ始めた。