それから約1年後、桐原先生は私達の卒業を期に
イギリスへ行った。
彼はその後、結婚した。
彼には私の心の叫びが届かなかった。
口にしなければ何も伝わらない。
そんな教訓を得た私は、その代償として
初恋が儚く散った。
前にも述べたように、私ははっきり言って成績が良い。
それは中学からのものであり、
高校入学後も変わらなかった。
だから勉強についてはそれなりのプライドがある。
そのプライドのせいか、
何かを理由にして勉強をしない人や
自分の成績を正面から受けとめない人が大嫌いだった。
「良いよね?ゆさって。」
女子はたまにこんな雰囲気になることがある。
これは中学校時代、
私を含めた女子3人で話していた時だ。
自分が2:1の1になりたくなくて、
でも誰か1になる人が欲しくて、
話をあわせてくれる人に答えを2択与える。
女はこんなせこい手を自然にやってのける。
私も女だからかこういう口調はカチッと頭にくる。
「そ、そう…「そうかな?」
私は気が弱いもう一人の女子が返事をするのを遮ってやった。
「毎日勉強漬けも楽なもんじゃないよ。
まぁ、成績が良くなきゃそれも理解できないだろうけどね。」
私は末っ子よ。
お姉様との口喧嘩である程度相手が頭に来るような台詞は言えるの。
ざまぁみろ。
心のなかでそう思っていても、口には出さない。
「え?何それ?私達のことなんかバカにしてない?」
声を裏返して必死で言う。
私達なんて図々しいのよ。
「バカにしてないよ。だって〇〇、この前のテスト良かったって言ってたじゃない。
私の気持ち少しは理解してくれてるんでしょ?
それに自分が満足すればそれでいいと思わない?」
喜びなさい。
あんたの大好きな疑問形で返してやったわよ。
悔しそうな顔をする相手。
これが大好きと思う私はきっと嫌なヤツ。
でもね?私の努力をバカにしたヤツは私のプライドが許さないのよ。
末っ子はプライドが高い。
たぶんそれが毒舌の原因。
きっと誰でも『私なんて…』
と思うときがある。
私はたぶん人よりそう思うときが多い。
なぜかと言うと、
私が姉からパシリにつかわれ、甘えん坊で、
初恋をして、毒舌で、大切にされている
つまり、私が末っ子だからだ。
私が中学1年の頃の夏…
幼馴染の親友と近所の図書館で勉強しようとした。
私達はお昼ご飯を食べてから正午12時に
幼馴染の家(自転車で2分くらい)に
集合という予定だった。
幼馴染は時間にルーズな方だったから、
私は12時ぴったりに家をでた。