中学校では、倒れることがしばしばあって、
つらい日々を送った。
仮病じゃないかと言われていることも知っていた。
だからこそ、私は、勉強を必死にして、学年1位の
鷹橋ゆさをつくった。
そこから生まれるそれなりのプライドもあった。
成績が下の人を笑うこともあった。
しかし、私は私の初恋の人である
桐原光一(きりはらこういち)先生の
『謙虚さと忍耐』
という言葉を忘れずに行動したつもりだった。
不良ばっかりのクラスにも貢献した。
勉強を教えてあげることもあった。
感謝されることは、素直に嬉しかったし、なにより
桐原先生が口には出さないが、私を誉めてくれるのが嬉しかった。
そこまでしたのに…
そうまでなると言い訳したくもなっちゃうよ。
私は、こんな風にブルーな気持ちになるとき、
いつも、母に甘える。
母の頭なでなでが恋しくなる。
母は私に
『こんな大きな図体をして、いつも甘えてくるわね。
でも、ゆさちゃんは、1番下の子だから、可愛くて
つい甘やかしちゃうのよ。』
と言う。
私が低血圧なのは、母の遺伝が原因なんだし、
末っ子だから、少しだけ、甘えてもいいでしょ?
私の初恋は苦しいものだった。
「桐原先生?」
桐原先生は、地元の消防団にも所属していて、昨晩は大きな火事があり、二時間しか寝ていないと言っていた。
私は、彼を起こす気はなかったが、なんとなく彼の名を呼んでいた。
「どうした?ゆさ?」
彼はたまに私のことを名前で呼ぶ。
私がそのたまにをいつも待っていることを彼は知らない。
「せんせぇー、起きてたの?」
私は、可愛らしくない声を少し高くして聞いてみた。
「いや、でもお前が呼んだから…」
やめてよ。貴方の一つ一つの言動に私は揺さぶれるの。
貴方は知らないでしょう?
「先生、眠り浅いんだね。」
可愛くない声で可愛くないことを言う。
そう、私の初恋は中学二年の時だった。
初恋の相手は、数学の教師で、
一年の頃からの担任でもある
桐原光一(きりはらこういち)
私は彼のお陰で当たり障りのない中学校生活を送れた。
そして、彼に恋を教わった。
青く、苦しい切ない恋を…
「ゆさ!!」
一度だけ、貴方が汗を流して私に駆け寄って来てくれたことがある。
あれは、中学二年の冬だった。
この日、学校に着いてからなんとなく、だるい感じがしていた。
そして朝読の時間は、目の視野がいつもの半分になり、
強い吐き気が襲ってきた。