〈ならば、お主からは命は貰えん。
そやつの時に一度失敗しているからな。
お主はこの世界に必要な人間だ。
なんせ、あの子らが信頼を寄せた人間だからな。〉



「でも……私には捧げられるものがありません。」








〈記憶を貰おう。
お主からではなく、その他のお主と関わった者の記憶からお主に関する記憶を。〉








来都たちの記憶から……私が消えるっていうこと……?



『それじゃあ、死んだのと何も変わらねぇじゃねぇか。』



〈それは違うな。
視界に捉えることも、話すことも出来る。
ただ、交わる前に巻き戻るだけだ。
最後に試させてもらおう。
今のあやつらにとってお主が大切だと言うならば、記憶がなくても同じ風に思えるのか。〉



次に会った時には、みんなから私の記憶はない……。








「……フフッ、上等。
受けて立つよ、その試練。」








別にみんなが私のことを知らなくても、私が覚えていればいい。



きっと最初は辛いだろうけど、それでもいい。



〈ならば、あの子らを救ってくれた人間に1つ褒美をやろう。〉



「褒美……?」



〈最後に、少しあやつらと話す時間をやろう。〉



それは、神様からの心ばかりのお礼だった。



「うん……ありがとう。」








『真琴。』








もう……本当に最後だね……。



「呉都さん……。」



また喉の奥が熱くなって、涙腺が緩むけれど、必死に堪える。



もう泣かない……。



最後は、笑って終わろう。



あの日は出来なかったけれど、今は目の前にいて、伝えられるのだから。








『元気でやれよ。
もう、誰かのために戦わなくていい。
自分のために生きろ。
俺はずっと見守っているから。』








そう言って笑いながら私の頭を撫でていた呉都さんの手はとても温かくて、一番安心出来た。



そして、呉都さんも少し涙目だった。



2人で堪えた涙は、笑顔になって……。








「うん。私、頑張るから。
だから、見守っていて。
呉都さんが見ていてくれれば、頑張れる気がするから。」








最期に抱きしめてくれた呉都さん。



その腕の中でゆっくりと瞼を閉じた。








『真琴……俺はお前を愛してる。』








耳元で囁かれた言葉を聞きながら、私の意識は飛んでいった。



最後の最後まで……呉都さんらしかったね。