〈そうか。
あの子らが承諾しているならば何も言うことは無い。
さぁ、申してみろ。お主の願いを。〉



たくさんの思い出がフラッシュバックする。



1人だと思っていた人生に、みんなが色をつけてくれた。



今の私の心は虹みたいだ。








「私の願いは…………能力を無くすこと。
使徒も神賢者もいない、誰もが平等に生きれる世界に。」








それは、ビビたちが消えてしまうという結末でもあるけれど。



私たちは力に縋りすぎていた。



私たちはヒーローなんかじゃない。



普通の人になって、自分の力で何かを成し遂げられるような人に。



〈聞き入れよう。
この世界に使徒は消え、お主らの能力も消させてもらう。〉



「ありがとう。」



『なぁ、1つ聞いてもいいか?』



今まで見守っていた呉都さんは神様に質問をした。



〈なんだ?〉



『さっき言ったよな、"この世界だけは違った"と。
なら、この世界の使徒は消えても、違う世界にはまた存在しちまうのか?』



〈我々は時代を見続けるという使命がある。
それは致し方のないことなのだ。
あの子らは使徒として敬われる存在であるが、感情がある。

お主らと過ごして、あの子らはこの世界で確かに掴んだ。
人は愚かで弱い生き物だが、誰かを救うために自身を犠牲にして立ち向かう人もいるのだと。
それを実感し、お主らとの思い出も存在する。
だから……あの子らは大丈夫だろう。〉



せめてこの世界でだけでも……ビビたちは幸せだったかな……。



『お前が幸せだったって思えてんなら、きっと使徒もそう思ってるさ。』



うん。



私の幸せには、ビビたちだって含まれている。



それぞれバラバラだったピースが合わさって、パズルが完成するように。








〈願いを叶えるには、何か代償が必要。
そやつの時のように、お主からも貰うが……よいな?〉



「はい。」



それはもう、初めから覚悟していたことだ。



呉都さんが自分の命を代償にしたことを知った時から。



私も……何か特別なものを持っている訳ではない。



だから、渡すものも初めから決めていた。








「……私の……命を貰ってください。」








その言葉に、神様は呉都さんに訪ねた。



〈お主はどうなんだ?〉



そう言われた呉都さんは、さっきの私のように苦笑いした。



『俺は……真琴に生きてもらいたい。
今の真琴は、もう俺だけじゃない。
来都たちや、他の奴らからも深く慕われている。
俺は真琴や来都たちにさせてしまった想いを、もう誰かにさせたくねぇ。』



それは呉都さんの本心。



私の願いを尊重しつつも、密かに思い続けた呉都さんの思い。