「誰かが終わらせないと。
私たちが始めてしまったこの物語を。」



呉都さんはもういなくなってしまった。



なら……もう私しかいない。



『決めたなら止めねぇよ。
待っていてくれたお前の元に、俺は帰ることも出来なかったからな。』



そう言って寂しそうな表情をした呉都さんに、苦笑いする。



大丈夫……私も呉都さんと同じ道を歩むから。



だから……1人じゃないよ。








「呉都さん、もう……苦しまないで。
私たちは……きっと、世界で一番幸せな出会いだったよ。」








『……あぁ。ありがとな。』








私たちは笑いあった。



今度こそ……私たちがこうして話をするのは最後だと分かっていたから。



きっと……神様からのささやかなプレゼントだと。



その時、私たちの頭上から光が舞い降りてきた。



その光は徐々に輝きを増し、私たちの元まで降下すると言葉が聞こえた。








〈お主の願いはなんだ?〉








「あなたが……神様?」



〈さよう。お主のことはずっと見ておった。
我の子供たちが世話になったな。〉



子供たち……?



「ビビたちのこと?」



〈あの子らは、人に信頼をおくことを恐怖していた。
何度も裏切られ、道具として扱われたからだ。〉








"僕は……契約者にそれ以上の関係は求めない"








いつか聞いたシヴァの言葉がようやく分かった。



裏切られるくらいなら、関心を持たなければいい。



シヴァは自分から歩み寄ることを既に諦めていたんだ。



〈それは幾度も繰り返されたが、この世界だけは違った。
お主や他の神賢者は、あの子らに愛情に似たものを抱いてくれた。
そして、あの子らもそれを感じていた。
それがこうして未来を変えたのだ。
だから、お主らには感謝している。〉



「感謝するのはこっちです。
ビビたちがいなかったら、とっくに現実から逃げてた。
ずっと孤独だった。
私はビビたちが大好きです。」



〈そう思っていてくれればあの子らも幸せだ。
だが……お主の願い……、〉



「いいんです。
終わらせるには、これしかないから……。
ビビたちには承諾してもらっています。
"私たちの力は人に授けるには勿体ないわ"なんて言ってましたけど……、」



あれは多分、私の決意が鈍らないために言ってくれた。



本当は寂しいんだと思う。



だって私もそうだから。



長い時間ビビと過ごして、家族のように接して、これからもずっと一緒にいれるんだと思ってた。



だけど能力のことを知って、使徒のことを知って……その永遠はないんだと知った。



私たちの別れは……今日なのだと……。