瞼をそっと持ち上げると、そこは闇ではなかった。
……公園……?
その時、公園の入口から2人の子供が走ってきた。
あぁ……思い出した。
これは……私の記憶、か。
あの子供は……私と朱羅。
まだ両親がいて、幸せだった時。
瞬きをするたびに、瞳に映る情景は変わった。
呉都さんと過ごした家。
呉都さんと遊びに行ったゲーセン。
2人で競走しながら歩いた道。
初めて来都たちと出会った屋上。
楽と戦った場所や桜悠と戦った場所。
そして……真実を知った場所。
『ったく、また無茶しやがって。』
耳に入ったその声に、私は驚きを隠せなかった。
振り向きたい……。
でも、振り向いたら……。
そう思っても、振り向かずにはいられなかった。
ゆっくりと振り返った先には……記憶の中にいるのと何ら変わりない呉都さんがいた。
「……呉都……さん……、」
『……泣くの早ぇよ。
つっても……俺がいけないんだよな……。』
視界が涙で滲んで、前が向けなくて下を向いた。
零れる涙は止まることを知らず、何度手の甲で拭ってもとめどなく流れ続けた。
その声も、その姿も、全てが嘘だと思いたくなくて。
私の記憶が作り出した虚像なんかじゃないって思いたくなくて。
『……ごめんな、真琴。』
そう言って私を抱きしめてくれるその腕は、あの時……初めて出会った時のことを思い出させた。
とても温かくて……その温かさにまた涙腺が緩む。
「……呉都さん……私……ッ、ごめん……なさい……ッ。」
"私"という罪を拾わせてしまって。
私の代わりに死なせてしまって。
呉都さんの苦しみを知らなくて。
支えてあげられなくて。
たくさん謝らなきゃいけないことがある。
だけど、その後に続く言葉が嗚咽混じりになって言えなくて。
そんな思いがごっちゃになって、涙になって呉都さんの胸を濡らす。