『我ハ守護神ノ力ヲ持ツ代行者。
我ノ前ニソビエ立ツ扉ニ、力ヲ解放スル鍵ヲ。
"想いは力に。力は大切なものの盾に。"
コノ言ノ葉ノ元ニ……"結"ノ扉ヲ開ク。
神ノ力ノ代償ハ……我ノ命。』
唱えると、内側から沸沸と熱いものが込み上げてきた。
いいよ……思う存分暴れて。
身体への負担も反動も大きいけれど、やるしかない。
能力で作った武器が使えないのなら……この手で。
そして……私とビビの瞳が……赤く染まった。
「……本番は……ここからだ。」
そうして私は、皇帝に突っ込んだ。
勢いよく顔を目掛けて殴りつける。
強く殴りつけたはずだったけれど、皇帝は倒れることはなく、血が混じった唾液を地面に吐き捨てた。
「ッ、流石だな……。
第一神賢者の力は凄まじい!!
だが……それでも私には勝てない。
私は全てを叩き込まれた最凶なのだから。」
切れた唇を親指で拭い、皇帝は私を見つめた。
やっぱり……そんな簡単にはいかないか……ッ。
「……上等だ……ッ!!」
私の拳と皇帝の拳が交わる。
私が出した手と反対の手で避けたように、皇帝も私の拳を避けた。
すかさず蹴りを放つが躱される。
そしてやり返された強烈な蹴りを両腕で受けるが、そのまま壁に叩きつけられた。
「ガハ……ッ!!」
〈真琴ッ!!〉
片膝を床につく。
打ち付けられた背中が痛い。
こんな痛い思いをするならやめればいい、と脳内で誰かが囁く。
そうだね……そうしたいよ……。
でも……ッ
「今までのみんなの痛みに比べれば……こんなものどうだってことないッ!!!」
その一言を合図に、私はまた間合いをつめる。
能力で強化した右ストレートが皇帝の頬にヒットする。
その勢いで、皇帝もまた壁に打ち付けられた。
「グ……ッ、これで……終わりか……ッ?
私を止めるんだろう……?
だったら、殺す気で来い。」
そう言いながら、皇帝がフラリと立ち上がる。
「君は私が殺したいほど憎いだろう?」
「……殺さない。」
「君の一番大事な人を殺したのは、私だ。
呉都さんに憧れて入ったけれど、結局は呉都さんは愚かだった。
だから裏切り者として殺した。」