階段を駆け上がる。



少しでも……少しでも早くこの戦いが終わるように。



「……ビビ、ごめんね。
私は、使徒まで巻き込んでいたんだね。」



〈……謝ることなんて何も無いわ。
私たち使徒はね……ずっと生きているの。
もう私たちには何年から生きているかなんて分からないくらい。
そして、それほどたくさんこの世に具現化してきた。
でもね……私たち使徒と人間が交わった世界は必ず崩壊した。
人がたくさん死ぬ世界も、悲しみに覆われた世界も、その他にも色々見てきた。〉



そういうビビはどこか悲しそうで。



〈そのたびに私たちは絶望に打ちひしがれた。
始まりは、1人の願いだったはずなのに。
私たち使徒の能力を手にした人間は、力を誇示するようになっていった。
様々な工夫をみんなで駆使したけれど、私たちの見えている結末は何も変わらなかった。
だから私たちは決めたの。



"次、この世界に具現化した時は、傍観者になろう"って。



私たちが干渉することで悲しみが生まれるのなら、私たちは何もしないようにしようって。
だから……今回は誰かを護ることに力を振るえることをとても嬉しく思うの。〉



「……それは違うよ。」



〈……真琴?〉



「……ビビたちがいなかったら、私は何も出来なかった。
ビビがくれた力がなかったら、誰かを護ることなんて出来なかった。
ビビがいなかったら、私はずっと孤独だった。
燐理や由樹さん、来都たちも出会うことはなかった。
だから……何もしてなくなんかない。」



ビビの存在がどれほど大きかったか。



何もしてないなんて……無みたいになってしまう。



この世界にビビたちがいたという証がないみたいじゃないか……。



〈……そうね。
私も、真琴がいなかったら何も変わらなかったわ。
真琴のお陰でこんな誇らしい気持ちでいれる。
ありがとう。
だから、どうか……"最後"は楽しみましょう?〉



その言葉に、今までの日々が蘇り唇を噛み締める。



私たちが今からすることは、終わりを意味するのだから。



「……うん。」



私たちは前を向いて最後の階段を登る。