「でも、護れてない、じゃんか……。
こないだの時も……何も出来なかった、じゃないか……ッ。」



「……そうだな。」



それを見なかったことにすることは出来ない。



俺たちは真琴を護れなくて、立ち尽くした。



あの時のことは一生忘れない。



「……だから、今日だけは護りてぇんだよ。
あいつが何を覚悟したのかは知らねぇが、そんなこと死んでもさせねぇ。」



誰がこれで最後にさせるか。



結局、一度も"これから"を約束することはなかったけれど。



絶対言わせてやる。







「……姉さんは、幸せだった、のかな……。
僕には、敵として姿を隠してしか、繋がれなかったけれど……。」



「……俺には分からない。
だが、あいつと一緒にいて……少なくとも俺は幸せだった。
あいつの言葉に、救われた。」









時々、思っていた。



もしかしたら真琴は、全てが分かってしまうのではないかと。



それほど……俺たちの心にすんなり入ってきて、溶け込んだ。



俺たちの負を全て飲み込んで、その温かさで包んでくれた。








「……俺たちは、あいつじゃなきゃ駄目だったんだ。
出会いはどうであれ、これからも俺はあいつのそばにいたい。」



あいつが隣にいなきゃ、もうつまらない。



その笑顔も、その言葉も、もうとっくに俺の心を掴んで離さない。



「そっか……。良かった……。
姉さんが、幸せなことが……僕の唯一の願いだった、から。
姉さんは、あの日のことを悔やんでるかも、しれないけど……僕は、連れていかれたのが姉さんじゃなくて、良かったって思ってる。
あの日のことは、後悔してない。」



「……なら、それを伝えてやれ。
あいつもお前も、もう気づいているんだろう?」



真琴がこっちの世界に入ったのは、決して兄さんのことだけじゃない。



きっと……弟を探していたんだろう。



そして帝王は、遠くからずっと見守っていた。



もうすれ違う必要はない。



時間は永遠に進み続ける。



あの日兄さんが死んで、今までの日々を後悔したように。



少なくとも2人には、そうあってほしくない。






「僕は……、」



「……今度は、味方として……あいつを護らねぇか?」



そう言って差し出した手を、帝王ー朱羅は戸惑いながらもそっと手を重ねた。



なぁ、真琴。



お前は……兄さんのようにならないでくれよ。



end