「……お前……、」
その顔を見て、なぜ帝王が真琴を選んだのかが分かった。
「なんであの人じゃなきゃ、ダメだったか……ッ……って言ったよね……。
それは…………僕が、弟だから、だよ。
僕は、剣城真琴の……弟、剣城 朱羅(シュラ)……。
両親を殺された、あの日……お前の父親に連れていかれた、子供……だよ。」
それを聞いて、あの日の記憶が蘇った。
兄さんが真琴を初めて連れてきたあの日、兄さんたちがくる少し前に父さんは上機嫌で帰ってきた。
その時、父さんは言った。
【久しぶりに良さそうなやつを連れてきた】と。
それから様々なことを叩き込み、最凶の皇帝に並ぶ最恐の帝王を作り出したと。
まさかそれが、真琴の弟だとは……。
「……僕は、あの日から、ずっと……夢見てたッ。
ここから、出られないのなら……、いつか、復讐を果たそう。
そのため、なら……少しでも、技術を盗んでおこうって……ッ。」
その声は、明確な意思を持っていた。
もしかしたら、俺たち以上の。
「ねぇ……知ってる……ッ?
姉さんが……どれだけ、傷ついたか。
どれだけ、自分の身を、犠牲にしてきたか。
僕たちは、2人で生きていくしか、なかったのに……それさえも、許されなかったッ。
支え合う、ことも……慰め合う、ことさえも……僕たちは、出来なかった。」
そうだ……。
俺は……俺たちは、真琴と帝王の両親を殺した。
例え俺たちが手にかけたわけじゃないにしても、俺たちは同じ殺し屋。
「1人で生きる、苦しみが……君に分かる……ッ?
僕は、姉さんを、遠くで見ることしか、出来なかった。
どれだけ……会いたい、と願ったか。
今すぐ影から、飛び出して、抱きしめたかった……。
でも、僕にはそれが、出来なかった……ッ。
だから、姉さんが君たちと一緒にいるのを見て、気が狂いそうになった……。
君たちといたら、姉さんが傷つくのは、分かってたから。
……ねぇ、なんで……姉さんを、傷つけたの……ッ?」
その問にとてつもなく深い悲しみが感じられた。
それに……帝王の顔を見ていると、真琴が浮かんでくる。
まるで……真琴に責められているみたいだな……。
「……俺も、叶えなければいけないことがある。
お前が復讐をしようとするように、俺たちは真琴を護ることを誓った。
だが……お前たちの両親を殺したことも、真琴を傷つけたことも、許しをこうつもりはない。」
俺たちは償わなければいけない。
それは俺たちの罪だから。