最後に、兄さんは俺を見た。
「来都……ごめん……な……ッ。
兄貴……らし、いこと……なん、て……ッ何一つ……出来なく、て……。
だけど……俺は、大事な、人を護れ……て死ねて……満足だ……ッ。
今まで、ろくな生き方し……て来なかっ……たが、最後……にマシな、こと出来て……俺は幸せ……だよ……ッ」
頼むから……そんな事言わないでくれ。
「……俺には……兄さんしかいねぇんだよ……ッ!!」
「そんな……こと、ねぇ……。
真琴……が、きっと……俺の代わ、り……になってくれ……る……。
俺にとって……光だっ……たよう、に……ッ。」
兄さんの声はどんどん小さくなっていった。
俺は柄にもなく涙を流しながら無我夢中で叫んだ。
「兄さん……ッ!!
俺、まだ兄さんに話してねぇことたくさんあるんだ!!
弟らしいこと何一つやれてねぇ!!
だから……死ぬなよ……ッ!!!!!!」
「そう……だ、な……ッ。
キャッチ、ボール……とか、やって……みたかった……な……ッ。」
「だから……ッ、」
「悪ぃ……な、来都……ッ。
真琴が……起き、たら……今日の……記憶は……ねぇ…。
もし……いつか、真実を……知っ、て……真琴の心……が壊、れること……があった、ら……伝えて、くれ……ッ。
……お前は、生きろ……ッ!!
こんな、俺に……幸せをくれ……て、ありが…とう…ッ。
愛して……る……っ……て……。」
それを最後に、兄さんは瞼を閉じた。
頬に一滴の涙を流して。
もう声を聞くことも、笑った顔を見ることも……二度と出来なくなった。
真琴の赤に囲まれて……兄さんは死んだ。
「呉都さん……ッ」
「来都……。」
兄さんの表情……どこか微笑んでるみてぇだ……。
この……バカ兄貴が……。
「……俺は、兄さんの意思を継ぐ。」
生まれて初めて、兄さんが俺にした頼みだから。
最初で最後の弟らしいこと。
俺は護りたい。
兄さんがここにいたっていう証を。
「……お前らを巻き込むわけにはいかねぇ。」
「何言ってるの、俺も手伝うよ。」
「僕も。
だって……家族以上でしょ、僕らは。」
巻き込んでしまう罪悪感があったが、この2人が仲間で良かったと心の底から思う。