「呉都さん!」



俺たちは兄さんに触れようとしたが、光が俺たちを阻む。



その光は徐々に膨らむと、女の子も一緒に飲み込んだ。



どうすればいいのか分からず、俺たちはただそこに立っていることしか出来なかった。



すると、光があの子の傷に群がり、傷が塞がり始めた。



「なんだ、これ……。」



光は収縮し、やがてゆっくりと消えていった。



そして……それと同時に兄さんは倒れた。



「……兄さんッ!!」



「真琴……は……生きて、る……か?」



有り得ない……。



あの深手を負ったあの子が生きているなんて……。



だが、桜悠の言葉は有り得ないことを現実にした。








「来都……この子、生きてる……。」








嘘だろ……?








「良かっ……た……。」








「……兄さん、何したんだよ……。」



俺には、兄さんが何かしたとしか思えなかった。



「頭ん中に……声が、聞こえ……たん、だ……ッ。


"大切なものを……護りたいか?"って……ッ。


護りてぇ……って言っ、たら……"助けてやる代わりに、何か差し出せ"って……。


ハッ……俺には……何も、ねぇっ……つーのに、皮肉言い……やがって……。」



来る前の嫌な予感はこれだったんだろうか。



もし、これだったのならば……俺にはどうすることも出来ないというのに。



「……兄さん、もしかして……ッ!!」



「俺に、差し出……せるもん……なんか1つ、しかねぇ……からな……。


だから……真琴の、こと……頼む……な……。」



なぁ……嘘だと言ってくれよ。



神様も馬鹿じゃないのか。



何か差し出せって言って兄さんが出すものなんて、聞かなくても決まってる……。



兄さんは、自分の命と引き換えに彼女を救うことを選んだんだ。








「嘘でしょ……?……呉都さん……死なないでよッ!!」







「楽……。お前は……人の、心が分か……るやつだ……。


両親の、分……まで……てめぇは生き、ろ……ッ。」



両親を殺してしまったことを1人でずっと悔いてきたから。








「呉都さんがいなくなったら俺たちはどうすればいいんですか……ッ?」



「桜悠……。
孤独……なんかじゃ、ねぇ……ぞ?


お前の周……り、には、家族以上……の繋がり、を持った……やつがいる……だろ……ッ?」



親に売られて孤独だと……必要ない存在なのだと感じていたから。