少しして、仲間ができた。
親に売られて、親父が買い取った伊佐波桜悠。
両親を殺してしまった今泉楽。
それが俺たちblackkillersだった。
俺たちに共通するのは、"人を殺したくない"という思い。
買われた桜悠と殺したとはいえ自分の意思ではなかった楽、親父に逆らえなかった俺。
俺たちの精神は簡単に壊れた。
だが、それを救ってくれたのも兄さんだった。
兄さんが支えてくれたから、俺たちは今もこうして生きてられる。
しかし、そんなある冬の日、事件は起きた。
兄さんからの電話に出ると、既に状況は深刻になっていた。
«真琴そっちに行ってるか?»
その問に、俺は首を横に振りながら答えた。
«そうか……。
あいつ、今日どっか行くっつってそっから帰ってきてねぇんだ。»
兄さんの声が少し切羽詰まっていた。
それもそのはずだ。
あの女の子は兄さんの一番大切な人。
兄さんを狙うやつらにとっては一番の人質。
その電話に、俺たちも探すと言って電話を切ると、桜悠と楽に連絡した。
街中を探し回った。
でも、見つからなかった。
何時間も走ったが……兄さんはそれ以上に走り回っていた。
額に汗を滲ませながら、必死に。
あの女の子だけは護りたい。
その気持ちがひしひしと伝わってきた。
だが、突如きた1つの電話で、兄さんは言った。
「お前ら、今日は帰れ。」
「でも……、」
楽が言いかけたけれど、兄さんは頑なに首を横に振った。
「気をつけて帰れよ。」
そう言うと、兄さんは走っていってしまった。
俺はその時、違和感を覚えた。
電話が終わった時の兄さんの表情を、俺は一度見たことがあったからだ。
あの女の子を連れてきたあの日。
ある1つの誓いを立てたあの日に。
「……どうするのー?」
「呉都さんに言われたら帰らなくちゃだけど……俺たちのリーダーは不服そうだね?」
「……追いかけるぞ。」
嫌な予感がした。
ここで兄さんを追わなければ、もう二度と会えないような気がした。
追いかけて着いた場所は、組織が管理する1つの倉庫だった。