「……よくここにいるのが分かったね。」
「……偶然だ。」
そう言って来都は私の横にきた。
お互いに顔は合わせず、ただ屋上から見える街を見つめていた。
「……来都は、呉都さんの弟だったんだね……。
全然気づかなかった。」
「……俺と兄さんは似てないからな。」
そんなことなかった。
私の頭を撫でてくれるその手も、
私に向けられた微笑みも、
来都を作るその優しさも。
全てが呉都さんの温かさと似ていた。
「……殺し屋だったこと、隠してて悪かった。」
「……来都たちは知っていたかもしれないけど、私だって隠してたこと沢山あった。
だから、別に怒ってないよ。」
殺し屋は死ぬほど嫌いだった。
それは今でも変わらない。
私の両親を殺したことは死んでも許さない。
でも……私の偏見だったのかもしれない。
殺し屋も人間だ。
私には分からないものもたくさんあるんだと思う。
呉都さんのことも、みんなのことも。
私たちは昼は仲間で、夜は敵だった。
まるで私と呉都さんみたいな関係だと思った。
みんなそれぞれの思いがある。
楽が桜悠を庇ったように。
傷を負った楽を桜悠と来都が必死に助けようとしたように。
桜悠が父親に立ち向かったように。
私はそんなみんなをずっと見てきた。
みんなは私のことを知っていてもそばにいてくれた。
だから私もみんなを受け入れる。
これでやっと同じ立ち位置につける。
「……決着をつけることにした。
皇帝をあそこまで追い詰めたのは私だから。」
「……別にお前のせいじゃねぇ。」
「……いいんだ。
これが私に出来る唯一のことだから。
だから……教えてくれない?
あの冬の日、私は死んだはずだった。
なのに私は今も生きている。
あの後……一体何があったの?」
ようやく語られる物語の最後のピース。
これが語られ終わる時、やっと全てが完成する。