「真琴ちゃんは覚悟を決めたよ。
僕たちには分からないけれど、ある冬の日に決着をつけるって。
来都くんなら分かるんじゃないかな。」
「……兄さんの命日だ。」
「決着をつけるにはうってつけってことか。
君たちはどうするの?」
分かりきった質問だけれど、せずにはいられなかった。
この子たちも、この物語に終止符を打たなければならないのだから。
「……俺は、真琴を護ると誓った。
あいつらも。
例えもうあの関係に戻れないとしても、やることは変わらない。」
それでいい。
真琴ちゃんとこの子たちは、切れない絆で結ばれている。
きっかけは正当じゃないかもしれない。
でも、きっかけは所詮過去だ。
誰かの代わりとか、誰かのためとかじゃない。
今はあの子たち自身が繋がっている。
「安心したよ。
僕と燐理も同じ思いだから。」
そっと立ち上がる。
僕はただ気持ちを確かめたかっただけだから。
「学園祭で言ったこと、覚えてる?」
「……あぁ。」
帰り際に来都くんを呼んで言った言葉。
"真琴くんから……離れないでね?"
「どんな結末になろうとも、それだけは忘れないで欲しいな。」
そう言い残し、公園を後にした。
呉都さんが死ぬ間際に最後に願ったのは何だっただろう。
ふとそんな疑問に駆られたが、すぐに打ち消した。
そんなこと、少し考えれば分かることだ。
「ったく、お前は優しすぎなんだよ。」
「フフッ、そうかもしれないね。
少なくとも、燐理よりは優しいよ。
燐理が僕の分までイライラしてくれるからね。」
木の影から出てきた燐理は、どこか不服そうだった。
「盗み聞きなんてよくないよ?」
「ハッ、1発ぶん殴ってやりゃあよかったのによ。
真琴を泣かした罰だっての。」
「あの子たちにも思う所があったと思うし、お互い様だよ。」
あの子たちも決してなんとも思わずに昨日を過ごしたわけじゃない。
真琴ちゃんが真実を知って絶望したように、
あの子たちは真琴ちゃんに向けられる視線に耐えたんだろう。
初めから分かっていたからこそ、受け入れた。
そして真琴ちゃんが壊れてしまうのを見て、きっと胸を痛めた。
「そう考えると……僕たちよりよっぽどあの子たちは傷ついたんだろうね……。」
僕の呟きは、風がどこかに運んでしまった。
end