(由樹side)
僕はある公園のベンチに腰掛けていた。
とある人を待つため。
それにしても……今は酷く自分の心が穏やかに感じる。
最後の戦いが待っているというのに。
これも、ようやく隣に立てたという自覚が芽生えたからかな。
懐かしい……。
初めて護ってもらったあの日。
誰かのために戦うあの子の姿は、今でも鮮明に思い出せる。
それほど綺麗だった。
初めてあの子の過去を聞いて、ようやく理解した。
あの子がこの汚れた世界で輝いていられるのは、呉都さんの光があったからこそだと。
自分では気づいてないのかもしれないけれど。
きっと呉都さんは、殺し屋であっても本当の姿は優しい人だったんだろうな……。
そしてきっとあの子たちも……。
ジャリッという靴音で、思考を現実に引き戻した。
「……よく俺の番号が分かりましたね。」
「まぁ、これでも一応護り屋の仲間だからね。」
待ち人はそっと僕の横に腰かけた。
「……真琴は、どうしてますか。」
そんなに心配ならこっそり見に来ればいいのに。
「いつも通り普通に話していいよ。
真琴ちゃんはいつもと変わらないよ。」
「……なら良かった。」
ずっと心配していたんだろう……。
目のクマからそんなことは容易に想像出来た。
だからこそ、疑問だったんだ。
「来都くん。
君は……君たちは、殺し屋だったんだね。」
「……。」
「何で真琴ちゃんに近づいたの?
初めて会ったときから全て知っていたんだろう?」
真琴ちゃんを傷つけることは初めから分かっていたはずなのに。とは言えなかったけれど。
「……"落とし前はつけなきゃならねぇ。
だから俺はあの子を護る"
それが兄さんの口癖だった。
俺は兄さんの意思を継いだ。
だから真琴に近づいた。」
「呉都さんは来都くんのお兄さんだったんだね。」
「……あぁ。」
「呉都さんが亡くなった日のことは?」
「……知っている。
俺たちは全てを見ていたから。
兄さんが俺たちに残した最後の言葉も。
真琴に残した最愛の言葉も。」
現実は残酷だというが、本当に残酷だ。
1人の死がこの子たちを繋げた。
そして、その繋がりが今のこの状況を作っている。