「なら、まだ諦めちゃいけないよ。
あの子たちは真琴ちゃんのことを全て知っていて、それでも一緒にいてくれたんでしょう?
自分たちのことを簡単に言えないほど……真琴ちゃんのことが大切だったんじゃないかな?」
「お前が見極めろ。
あいつらがお前の味方なのか敵なのか。」
見極める……。
【お前のその瞳が、大事なものを教えてくれる。
見たくなくて曇っちまうこともあるが……最後にはきっと示してくれるさ。】
この世界は……呉都さんの言葉通りだね。
貴方の言葉が私の背中を押してくれる。
あの日見た来都たちの表情は、どこか苦しそうだった。
みんながほんのたまに見せる表情。
そうだ……。
忘れていた……。
私があの3人と共にあることを決めた時、心の中で何を望んだのか。
「私は……みんなを苦しめるものから護りたかったんだ……。」
今度こそ護ろう。
だって私は護り屋だもの。
「なら、僕たちはそれを手伝うだけだよ。」
「まだ巻き込みたくねぇとか思ってんならぶん殴るからな。」
「うん。もう迷わない。
だから……私についてきてください。」
やっと見えた私たちの道。
私たちはここからスタートする。
「まずはお前の記憶を取り戻さなきゃならねぇな。
なぁ、ビビはどうした?」
「分からない……。テレパシーも使えなくなってる。」
向こうから強制的に切断されている。
ビビ……どこにいるの?
近くにいても、いつの間にか分からなくなってしまっていたビビの気持ち。
いつから……すれ違っていたんだろう。
〈失礼申す。〉
振り返ると、セイがいた。
「……なんだ、この犬。」
「第五神賢者、皇帝の使徒だよ。
私になにか用?セイ。」
〈主から言伝を頼まれておる。
"あの冬の日に、全ての決着をつけよう。
場所はまた指定する。"とのことだ。〉
「冬の日なんて山ほどあるじゃねぇか。」
違う……。
私たちにとって冬の日は1つしかない。
私を殺したいほど憎んでいる皇帝。
その日を選ぶのは当然のことだ。
「分かったって伝えて。
あと、私はもう壊れない、とも。」
〈承った。〉
長く続いたこの物語に終止符を打とう。
あの冬の日に、あの場所で。
それが……呉都さんに私が出来る唯一のことだから。