私の物語は、両親を殺され弟を連れ攫われたあの日から始まった。
どんどん冷たくなって動かない両親のそばで、身体を揺さぶりながら私は永遠と泣き続けた。
小さかった私にとって両親の死を受け止めるには、あまりにも幼すぎた。
そして、いつもそばにいた弟もいなくなってしまった。
私は……この世界で一人ぼっちになってしまった。
どれくらい泣き続けただろう。
もう声も枯れて涙も出なくなってしまうくらい泣いた時、ふわりと誰かが後ろからギュッと抱きしめてくれた。
「ごめんな……。
お前は……俺が必ず護ってやる。」
誰かも分からないその温かさに、私の涙はまた溢れた。
それが、私と呉都さんの出会いだった。
「ねぇ呉都さん。今日の夕ご飯なに?」
「今日はオムライスだぞ?」
「やったぁ!!呉都さんのオムライス大好き!」
あの日から、私は呉都さんと暮らし始めた。
結局、呉都さんが誰なのか。
なぜあの時あそこにいたのか。
知りたいことは山ほどあったし、知らないことも山ほどあったけれど、私は呉都さんについていった。
今思えば、温もりが欲しかったのかもしれない。
1人になってしまったという絶望で埋め尽くされた時に、突如差し込んだ一筋の光。
私はそれに縋るしかなかった。
呉都さんは沢山色んな話をしてくれた。
学校に行けない私に勉強を教えてくれたりもした。
ゲームセンターで勝負をして、
その帰りにアイスを買って食べたり、
影を踏みながら帰ったり。
私にとって呉都さんは、兄のようだった。
そんな呉都さんはたまにおかしな話をする時があった。