(来都side)
皇帝が言ったことに偽りはなかった。
志浪呉都は俺の兄だ。
俺は……俺たちは……兄さんの意思を継ぐと決めたあの日から、いつかこの日が来ると思っていた。
だけど……真琴と出会って時間を共にしていくうちに、そんな日など永遠に来なければいいと思った。
怖かったんだ、俺たちは。
真実を知って真琴が傷つくのは初めから分かっていたから。
そして……俺たちを見る瞳が変わることも。
『……ぁ……ぁぁ……ッ』
だからこそ見てるのが辛かった。
受け入れたくないと拒んでいても、真実はとてつもなく残酷に浸透していく。
今の真琴は……真実に打ちのめされている。
今すぐ真琴の元までいって抱きしめてやりたい。
いつもみたいに頭を撫でて"大丈夫だ"と言ってやりたい。
だが……今の俺にはもう……してやれない。
今思えば、あの行為は俺の安定剤だったのかもしれない。
否定されることを恐れて、少しでもそうならないようにと。
それこそ……ただの自己満足だ。
真琴のそばにいることで揺らいでしまった己の心への。
俺の瞳に写る真琴は……もう壊れかけていた。
その声が、その姿が、全部が俺への戒めだった。
『……ぁぁああア"ア"ッ!!!!』
顔を手で覆って叫び続ける真琴の身体が徐々に光り始めた。
「来都くんッ!!真琴が……ッ!!」
力が暴走し始めてるのか……?
皇帝を見ると、微笑んでいた。
「……お前……これが目的だったのか……ッ!!」
知っていた。
皇帝が兄さんを尊敬する以上の瞳で見ていたことを。
そして兄さんが死んだ時、一番憤りを感じていたことも。
だから壊すことにしたのか。
真琴の心を。