『…………殺し屋、だったの……ッ?』



築き上げてきたものがどんどん崩れ落ちていく。



思い出のピースが1つ、また1つと。



「……あぁ。」



ようやく合った来都との視線は、もう今までとは違った。



なんで来都がそんな顔するんだ……ッ。



「……俺たちは殺し屋だ。
ずっと……それを偽って一緒にいた。」



信じたくない……ッ、聞きたくない……ッ!!



もう真実なんて知らなくていい。



こんな辛い現実が待っているのなら、何も私は聞かないことにする。



私は……ただあの時間が続けば……。



「剣城真琴、思い出せ。あの日の出来事を。
君が今一番知りたい記憶は、君の肩に乗っている使徒が所持している。」



ビビはそっと私の肩から降りた。



『……ビビも……なの……?』



もうそれだけで分かってしまった。



ずっと今まで一緒に過ごしてきたんだ。



言葉にしなくても分かってしまう。



分かりたくないのに……。










「ここにいるヤツらは、君のことを知りながら、それを偽り、隠し、騙してきた。
君だけが何も知らずに生きてきたんだ、剣城真琴。
志浪たちは君がwhite castleだと言う事も、君が女だと言う事も全て知っていた。
そして、そこにいる君の使徒も、そばにいたというのに真実を隠蔽し、あまつさえ君の記憶から抹消した。
君が一生懸命隠してきたことは全て無意味だったんだよ。」



来都も桜悠も楽も……そしてビビにさえも。



私は裏切られていたんだろうか。



私だけが1人でバカみたいに幸せだと思っていたんだろうか。



みんなは沢山の悩みや悲しみを抱えていたというのに。



私はみんなの前で何をしてた?










あぁ、みんなをそんな風にしたのは……私だ。



私がみんなに嘘をつかせたんだ。



もう……嫌……。



誰かの時間を奪うのは……もう嫌なの……ッ。



『……ぁ……ぁぁ……ッ』



“辛いだろう?苦しいだろう?
解放しろ……その力を。”



誰かが語りかけている気がする。



もう1人の……私が見えた。



“壊せ……壊せ……この世の全てを。”



こんなことになるなら……1人で良かった。



私が誰かを不幸にすることは分かっていたのに、見ないフリをしていた。



少し……羨ましかったんだ……ッ。










『……ぁぁああア"ア"ッ!!!!』



ごめんなさい……ッ。



私は、忘れていたわけじゃない。



記憶の断片は確かに存在していた。



いつか見たあの赤に染まる夢も……。



私が罪を犯していると心の中で分かっていたことも……。



誰を殺したかなんて分からなかったけれど……呉都さんだったんだね……。



でも……もうどうでもいい……。



裏切られたという事実が私を壊した。



そこからの記憶はもうなくなっていた。